Print-006でも簡単に触れましたが、私がここで紹介しているサイアノタイププリントは、デジタルカメラの画像データをネガとして使う手法です。プリント自体は古典的手法を使いますが、ネガフィルムの作成はコストがかからず手軽にできるデジタルカメラの長所を取り入れることで、多少の薬や道具が必要にはなりますが、誰でも手軽にサイアノタイププリントを楽しめるのではないかと考えています。
サイアノタイププリントを見ていただくときに、よく聞かれる質問の一つが「赤とか緑とかにはできないのですか?」ということです。サイアノタイププリントの場合は、鉄の化学反応を利用して紺青色を出しているため答えは「No」となります。一方で、青以外のプリントをしたい場合には、私の頭には3つの方法が浮かびます。
一つは、好みの色の紙にサイアノタイププリントをする方法です。この場合、青と紙の色、すなわち、赤い紙を使えば赤と青になります。先日画材屋さんで購入したカラー紙のスケッチブックのプリント結果は
Print-028で紹介していますので、よかったらご覧ください。また、「Blueprint to cyanotypes」という本の中で、数種類の色のついた布にサイアノタイププリントをした例が紹介されています。
もう一つは、サイアノタイププリントにこだわらず、すべてデジタルで処理する手法です。画像処理ソフトを使って任意の色に変えることができ、筆目も好みのものに変えることができます。Nick Papadakisさんは「CYANOTYPES」の中でサイアノタイプの作品を作りたいなら2ステップだといっています。①Photoshopを立ち上げる。②色調整メニューであらかじめ用意されているサイアノタイプをクリック! そして、自宅のプリンタで出力すれば出来上がりです。この場合、作業はすべてソフトでの処理となりますので、ソフトの画像加工技術の力が大きいと言わざるを得ません。。また、プリントもプリンタの性能に依存しますので、広義にはサイアノタイプに含まれるかもしれませんが、古典的手法とは言えません。
余談ですがこの「CYANOTYPES」は全てデジタルプロセスでサイアノタイプ調のプリントをやりたい方には便利な本ですが、古典的手法でサイアノタイププリントをされたい方には全く参考にならないのでご参考まで。
最後の一つは、古典的手法を使いつつ、調色を行う方法です。これは、現像や水洗の過程でタンニン酸などを使うことにより、青を少しセピアに近い色にすることができたり、漂白剤を使って青を抜いた後に茶色にしたりすることができます。これも「Blueprint to cyanotypes」や「Cyanotype Historical and Alternative Photography」に紹介されている手法ですが、特に、「Cyanotype Historical and Alternative Photography」にはコーヒー調色、紅茶調色、樫の皮の煮汁調色などが紹介されています。紅茶調色は強い臭いもなく、市販のティーパックをそのまま使えばよいので手軽に試せます。これから調色もいくつか試してみようかと思いますので、その結果はブログで紹介したいと思います。また、一つ目の手法にも近いですが、紙を薄いセピア色にしてしまうことにより、やや古めかしい雰囲気の写真にすることもできます。
個人的にはそのままでもきれいな青が出ているので十分作品性があるのではと思いますが、感光液の作り方や、選択した紙との組み合わせでこの青も全く違う青となってしまいます。色々試してみて、好みの青を見つけましょう。
参考文献
Nick Papadakis「CYANOTYPES」 2013
Malin Fabbli and Gary Fabbli 「Blueprint to cyanotypes」 alternativephotography.com 2006
Peter Mrhar 「Cyanotype Historical and Alternative Photography」 2013
タンニン酸 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%B3
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