2013年12月7日土曜日

Print-025 写真とカメラ

サイアノタイププリントの流れを一通り説明しましたので、今回は写真とカメラについて私の考えを書いてみようと思います。

Print-004でもちょっとだけ触れましたが、写真とカメラは密接な関係にあります。

かつてのカメラは一度購入すれば一生使えるような品でした。数十年前の機種も往年の名機と呼ばれたものは今でも人気があり、ちゃんとメンテナンスされているものは中古品でも高価格で販売されています。これは、当時のカメラが高価で誰でも購入できなかったこと、構造がシンプルで、故障しても修理すればまた使えるようになったこと、新たに購入するよりも修理したほうが安かったこと、使っていた人が愛着を持って丁寧に使っていたものだけが今も残っていることなどが考えられます。また、写真を撮るために、写真の基礎である、絞り、シャッタースピード、ISO感度、露出、そしてプリントにする暗室作業を完全に理解していないとよい写真が出来なかったため、かなりの技術を必要としました。

これらのフィルムカメラに変わり、現在は手軽で簡単で便利で失敗が少なくランニングコストが安いデジタルカメラが新機種のほぼすべてを占めるようになりました。デジタルカメラはユーザーがシャッターだけ押せば、露出調整やホワイトバランス、シャッタースピード、フォーカスなどはカメラが自動で調整してくれるため、ある程度の写真が誰でも撮れてしまいます。この技術の進歩はすさまじく、新たな視点や高性能をうたった新機種が日々発売されています。デジタルカメラなのにフィルムカメラのような外観にしている機種も人気があるようです。ですが、せっかく購入したカメラも気が付けばすでに型落ち品になっていたり、購入した時には満足していたはずなのに新機種が気になってしまったりします。そして、その気はなかったのになぜか買い換えたい気持ちがむくむくとわいてきます。特にカメラの調子が少しでも悪くなっていれば、修理するよりも購入したほうが安いしより便利になるしということで、新機種を購入しがちです。カメラが消耗品になったといっても過言ではない状況になってしまいました。正直これではカメラになかなか愛着がわきませんよね。

Print-005でも触れましたが、最近は写真に対する個性を本当に考えされられます。写真の目的にもよるのですが、例えば報道写真であれば、誰が撮っても同じように撮れる方が望ましいのかもしれません(反論ある方たくさんいるでしょうね・・)が、作品としての写真であれば、個性のない作品では、作家の主義主張を写真を通して伝えていくことは難しいかもしれません。ここに撮影した写真をソフトウェアを使ってアレンジしたり、合成したり、映像と融合させたりする手法が多くみられることも関係しているのかもしれません。

デジタルカメラの利便性に慣れてしまえば、よっぽどの理由がない限りフィルムカメラに戻ることは極めて難しいでしょう。あえて両者で撮影された写真に決定的な違いを見つけるならば、一枚の重みではないでしょうか。フィルムカメラは一枚一枚に手間とコストがかかります。特に大判カメラは一日に撮影できる枚数も多くないので、一枚撮影するのにもかなり慎重になります。一方のデジタルカメラは何百枚撮影してもコストも手間もかかりません。必要なのは撮影する時間とメモリ容量だけです。不要な写真はその場で消去することも可能です。何百枚も撮影した中から一番良い一枚を選ぶこともできます。しかし、その一枚は撮ろうとして撮ったものではなく、たまたま撮れた一枚である場合が多く、通りすがりに撮影した写真に見えてしまうものもたくさんあります。一枚だけ展示する作品展では通用しますが、何(十)枚も展示する作品展では、テーマがぶれてしまう可能性がありますし、写真の中に必然性がないものが写っている場合も多々あります。

たとえデジタルカメラでも、作品を作ろうと考えるのなら、一枚の重みを考えてじっくり撮影したいものです。




-----
本ブログは紫月燈明の独断により書かれています。あくまでも趣味の範囲でご利用ください。
お気づきの点、ご連絡いただければ幸いです。
.
---
免責事項
・本ブログを参考とした営利を目的とする行為(有料の写真教室、ワークショップ含む)は固くお断りします。
・本ブログの趣旨にそぐわないコメントや誹謗中傷を含むようなコメントなど、紫月燈明が本ブログには不適切と判断したコメントは削除させていただく場合があります。
・本ブログ情報の利用により発生したいかなる損害について、紫月燈明は一切責任を負いません。
・本ブログは予告なしに過去掲載分を含む記事の内容の変更や、更新の中断または中止を行うことがあります。
・本ブログで紹介・リンクしている他のいかなるウェブサイトや文献の内容に対して、紫月燈明は一切責任を負いません。

2 件のコメント:

  1. アジサイのプリント、とても素敵です。
    カメラは次々と新機種がでていますね。スマホにくっつけるレンズみたいなカメラも?なかなかついていけません・・・。

    返信削除
    返信
    1. QXのことですね。斬新なアイデアですので、流行るかどうか楽しみです。もし流行れば、コンパクトデジカメは駆逐されるような気がします。数年後にはデジカメを変えた機種として名が残るかも・・

      削除