2013年10月31日木曜日

Print-009 作品の質を上げるためのデジタルネガ技術(1)

技術というほどではないかもしれませんが、デジタルネガを作る際にちょっと気にしておくとよいのではと私が思うことを紹介します。初めてサイアノタイププリントをする際には全く気にする必要はありませんが、作品の質を少しでもあげたい場合は効果があるのではと思います。



①左右反転
 露光するとき、感光紙とデジタルネガフィルムは密着させます。正像のままデジタルネガを作成すると、露光時は、ネガの印刷面が最上部、次にフィルム、そして感光紙の順になります。ここで問題となるのがフィルムには厚みがあるということです。デジタルネガの印刷面で遮光されたはずの光がこの厚さの中で拡散してしまうため、像をややぼかしてしまいます。そこで、あらかじめ左右反転してデジタルネガを作成しておくと、最上部にフィルム面、次にネガの印刷面、そして感光紙となります。この場合、ネガの印刷面と感光紙が密着するため、像がぼけることはありません。



②トーンカーブ(ダイナミックレンジ)の調整
 デジタルデータは、8ビットの場合0~255の階調をもちます。WindowsPCではbmpやjpgは基本的に画像は8ビットです。デジタルネガにはこの階調を全て持たせることが可能ですが、実際に感光紙に露光させると、このすべての階調を表現できず、明るい方がつぶれていたり、暗い方がつぶれていたり、両方ともつぶれていたりして、コントラストがない画像に見えることがあります。いわゆるダイナミックレンジが狭い画像になります。これは感光紙のベースとなる紙の特性によるものと思われます。同じネガでも紙を変えると画像は大きく変わってきますので、紙の特性を十分に把握した上で、ネガのダイナミックレンジを紙が表現できる範囲に抑えます。具体的には、0から255までの階調がわかるようなテストネガフィルムを作り、紙のダイナミックレンジがどのくらいかを確認します。その結果、例えば、ある露光時間において、20~230(8bit)の範囲しか表現されていなかったとすると、実際のネガに20以下、230以上のデータがあっても紙には表現できないことになりますので、デジタルネガを作成するときにトーンカーブかヒストグラムの調整でこの範囲にデータをつぶしてあげます。そうすれば、デジタルネガ上の階調を全て表現できることになります。一度このテストネガを作っておけば、新しい紙を使う際に事前にネガを作る参考データが取れることになります。



テスト用グラデーションデータの例(数字は明るさ)
これを白黒反転+左右反転して印刷してネガとして使用する




但し、トーンカーブの調整やヒストグラムの圧縮は階調を減らした結果、ビット飛び(ヒストグラムが歯抜けになる)を起こす可能性がありますので、注意が必要です。




サイアノタイププリントのトーンカーブについては、Peter Mrharさんの本にも詳しく書かれています。





参考文献
Peter Mrhar 「Cyanotype Historical and Alternative Photography」 2013


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2013年10月28日月曜日

Print-008 デジタルネガを作ってみよう

サイアノタイププリントになぜネガが必要なのでしょうか?



それは、感光紙(については後程詳しく書きます)は光が当たった部分が反応し青(印画紙の場合は黒)く変化します。光が当たらなかった部分は水洗後(印画紙の場合は現像後)に反応しなかった部分がすべて洗い流されてしまうため、紙の色そのままとなります。画像を紙に写すためには光の明暗をコントロールする必要があります。このためにフィルムを使うわけです。そのフィルムは人の目にわかり安い白黒画像(ポジフィルム)だと、紙に写す際に白黒反転してしまいますので、わざとフィルムをネガにしておいて、紙の上に写した時にわかりやすいようにするのです。



前回のページでデータの上でネガを作りました。印刷するだけなら保存は不要ですが、何回もデジタルネガを印刷する可能性がある場合にはデジタルネガをjpgファイルで保存しておくとよいでしょう。ただしjpgファイルは保存を繰り返すごとに画像が劣化してしまうので、デジタルネガで小修整したい場合は、オリジナルから作り直したほうがよいかもしれません。



デジタルネガを普通の紙に印刷してしまうと光が感光紙まで届かないので、透明もしくは半透明の用紙に印刷します。デジタルネガプリント専用の用紙がピクトリコ社から発売されています。プリンタの解像度が高ければ高品位のデジタルネガを作ることができます。が、すべてのプリンタで印刷できないこと、発売されているサイズがレターサイズ(216x279mm)とA3+(329x483mm)の2種類しかないこと、高価であることの点が使うことを躊躇させてしまいます。



初心者のうちはインクジェット対応のOHP用紙を使うのがよいでしょう。普通用紙よりは高いですが、ピクトリコデジタルネガフィルムよりは安価です。一般の人に使いやすいA4サイズも発売されています。ただし、メーカーによってそれぞれ特徴があるので、一度買ったものを継続して使うのがいいと思います。毎回違うものを購入していると、都度ネガ(濃度、プリンタなど)を調整する必要が出てくるかもしれません。



まずは、A4のOHP用紙に2枚のネガを載せて印刷し、A5サイズの用紙にプリントするようにしてみましょう。もちろん2枚同じネガでも違うネガでもかまいません。慣れて作品が安定してきたらA4やもっと大きいデジタルネガにして大作を目指してみるのもいいかもしれません。





この手法の他に、プリンタのトナーカートリッジ中に正規のトナーの代わりにサイアノタイププリントの感光液を入れる方法もあります。これならデジタルネガは不要ですが、事実上サイアノタイプ専用のプリンタになってしまいますし、使い方によってはプリンタを壊してしまう場合があるので、詳しくは別な機会にしたいと思います。




参考文献
ピクトリコプロ・デジタルネガフィルムTPS100
http://www.pictorico.co.jp/system/contents/1374/



ピクトリコプロ・デジタルネガフィルムTPS100で楽しむ写真の特殊技法 サイアノタイプ
http://www.pictorico.jp/person/diginega_cyano/





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2013年10月27日日曜日

Print-007 デジタルネガって何だろう?

フィルムカメラで撮影されたネガフィルムは、使うフィルムによって、白黒ネガ、カラーネガがあります。サイアノタイププリントは青色の単色で写真を表現しますので、白黒ネガを使います。35mmフィルムの白黒ネガでもそのまま使えるのですが、像が小さいため、専用の機械を使って像を拡大する必要があります。大きいサイズのフィルム(4×5, 8×10など)を使えば一つの解にはなるのですが、現在ではそんなカメラやフィルムを探すこと自体が大変であり、しかも決して安くありません。

そこで、デジタルカメラで撮影したカラー画像を加工して、プリンタでフィルムに印刷してしまおうというのが、このデジタルネガの考え方です。ツールもWindowsユーザーであればデフォルトでインストールされているツールでできるレベルです。もちろんPhotoshopやPaintshopなどあると細かい調整がとてもやりやすくなります。最近では市販のデジタルネガ専用フィルムも販売されています。

手順を簡単に紹介します。

①お気に入りのカラー画像を用意します。(jpg, bmpなど)



②白黒化します。
 Microsoft Office Picture Manager→画像→色→鮮やかさを0



③ネガ化します。
 Paint→変形→色の反転



④左右反転します。
 Paint→編集→全て選択、変形→反転と回転→水平方向



⑤④をプリンタでOHPシートやデジタルネガフィルムに印刷します。


簡単にできますね。印刷については次回に。


*厳密にはネガプリントにトーンカーブの調整をする必要がありますが、それは後程説明します。


参考文献
「デジタル・ゼラチンシルバー モノクロプリント ガイドブック」 ピクトリコ


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2013年10月24日木曜日

Print-006 デジタル写真技術と古典的手法との融合

以前はカメラ屋さんには何百本もフィルムが置かれていたのですが、2013年現在、カメラ屋さんのフィルムコーナーは随分と縮小されました。数えるほどの種類がちょっと置かれているだけで、来年もお気に入りのフィルムが購入できるのか誰にもわかりません。

工業製品は生産者(企業)の利益が上がり続ける限り販売されますが、利益が上がらなくなると利用者の要望にかかわらず生産中止、そして販売中止になってしま場合があります。たくさん売れている時は生産量も多いため、設備費や人件費などの固定費分が薄まって単価も下がりますが、あまり売れていないときは過剰在庫とならないよう生産量を減らすため、単価が上がってしまいます。企業はボランティア団体ではありません。多くの利益をあげた企業が社会に還元することはあるかもしれませんが、利益のない会社は淘汰されてしまいます。ですので、デジタルカメラ全盛の今、フィルムを扱う企業が年々減っているのはやむを得ないことかもしれません。

一方で、著名な写真家などが賛同しているゼラチンシルバーセッション(GSS)では、銀塩写真の面白さをより多くの人に伝えていけば、銀塩写真技術や機材、フィルム、印画紙を後世に残せる、というプロジェクトを進めています。個人的には大いに賛同します(ちなみに私はメンバーではありません・・・、一般市民です)。何とか実を結んでほしいものです。

そこで、フィルムや印画紙を使わず、かつ全てを工業製品に依存しない写真制作方法はないのでしょうか?デジタルカメラで撮影したデータをネガフィルムとして使用し、感光紙も作ってしまうサイアノタイププリントが一つの解ではないかと私は勝手に思っています。

中松さんの論文にもデジタルと古典的手法をあわせた手法でのサイアノタイププリントのやり方が丁寧に紹介されています。次回より時間をかけて誰でもできるように詳しく紹介していきたいと思います。






参考文献

中松満始 「デジタル技術による古典写真技術の再現について」 千葉県立現代産業科学館研究報告第16号 2010
http://www.chiba-muse.or.jp/SCIENCE/doc/research/21kenkyu_houkoku/nakamatsu_01.pdf

ゼラチンシルバーセッション
http://www.gs-s.info/

「デジタル・ゼラチンシルバー モノクロプリント ガイドブック」 ピクトリコ



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Print-005 写真の個性とは?

写真の個性とは何でしょうか?

ここでは作家の意図が十分に反映された作品を写真の個性と定義することにします。

デジタルカメラでは、メーカー、機種ごとに色づくりが異なっています。そして、レンズも違います。ですので、同じ人が同じものを違うカメラで撮影すると、全く違った写真となる場合があります。ですが、これらの違いははカメラの性能や特性、レンズなどの部品の違いによるものであって、作家の個性とはいえない気がします。もちろん、このデジタルデータをソフトウェアでより好みの状態に調整していく場合には、作家の個性が十分に入ることになるといえるのではないでしょうか。

フィルムカメラでは、まず、作家が好みのフィルムを選びます。もちろん選択肢は販売されている種類の中からに限らてしまいます。そして、カメラはレンズによる光の集光とシャッターが開く機能だけを提供します。カメラによる色づくりはありません。その後、フィルム現像、印画紙露光、印画紙現像などの工程を経て一枚の写真が出来上がります。現像工程では、薬剤の選定、現像液の調合、停止液の調合、定着液の調合、現像時間、現像温度など様々な要素が存在し、印画紙露光工程では、グレード、余白、覆い焼き、焼き込みなどが、印画紙現像工程では、フィルム現像工程と同様にさまざまな要素が存在し、ここに作家の個性が入り込む余地が大いにあるのではないでしょうか。但し、ここにはものすごい労力と手間がかかります。

この労力をできるだけ少なくしつつ、写真の個性を出せる手法はないのでしょうか?デジタルカメラよりちょっとだけ手間はかかりますが、フィルムカメラよりは圧倒的に手間がかからない、むしろ、デジタルカメラの利便性とフィルムカメラの特長をうまく利用した方法がサイアノタイププリントだと私は勝手に考えています。


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2013年10月22日火曜日

Print-004 写真史(カメラ史?)をさわりだけ

もともと写真は大変手間のかかるものでした。世界で最初に像を定着させたといわれるニエプス(Joseph Nicéphore Niépce、1765~1833)によって撮影された「ル・グラの窓からの眺め」(1826頃)は、露光時間だけで約6時間かけて、自宅の庭の像を金属板に定着させたといわれています。これが世界初の写真だといわれています。

一枚撮影するのに丸一日を費やしたこのころから始まり、写真は画像を得られるだけではなく、少しでもたくさん、少しでも安く、そして少しでも早く像が見たいという写真家の熱い要求が写真を進化させていきました。しかし、まだまだ誰でも写真が撮れるというものではありませんでした。

1888年、イーストマン社が現像を請け負うサービスを開始、1900年にはブローニーフィルムが登場、そして、1925年の35mmフィルムの登場を経て、一般の人々へカメラが普及しはじめ、誰でも写真撮影が可能な環境が整っていきました。

しばらくフィルムの時代が続きますが、そこに革命をもたらしたのが、1995年にカシオ計算機から発売された液晶パネルを搭載したデジタルカメラQV-10であるといわれています。ここからデジタルカメラが急速に普及し、今や店頭に並ぶカメラはほぼ全てデジタルカメラ、携帯電話にもカメラが搭載され、DSLR、C-DSC、PCカメラなどを含めると広義のカメラ普及率(日本)は100%を大いに超えているのではないでしょうか。

デジタルカメラは、使用しているメモリ容量が満杯になるまで画像(写真)が保存できるため事実上枚数(コスト)を気にする必要がない、撮影した直後に画像がチェックできるため失敗が怖くない、失敗写真はその場で消せる、一枚当たりのコストがフイルムに比べて圧倒的に安い、などフィルムカメラの常識をことごとく覆していきました。また、C-DSCのような小型化が進み、女性や子供でも気軽にもてるようになり、デザインも黒一辺倒から明るくカラフルな色のカメラも登場し始め、新たな写真ファンの層を作り出すことにも成功したといえます。また、かつては現像・プリントを請け負ってくれる店が多くありましたが、今や数万円で優秀なプリンタが購入できることから、自宅でプリントまでできるようになりました。

一方で、写真はあくまでも工業製品であるカメラとプリンタがないと成り立たなくなってしまいました。多くの人はここに疑問を持つことなく写真を撮影しているかもしれませんが、構図以外のものに撮影者の意図や個性が入り込む余地が極めて少なくなっています。要はいいカメラやいいプリンタを購入すれば、いつでも誰でも一定レベル以上の写真が作れてしまう便利な世の中になったわけです。

デジタルカメラの開発競争はめまぐるしく、日々新機種、新機能をうたったカメラが登場しています。一製品あたりの寿命は短く、ユーザーも数年たてば新しいカメラやプリンタを購入したほうが利便性が大いにあがると考えます。ここに写真も大量消費社会の一部となってしまったといえるのではないでしょうか。

このような状況の中で、写真に個性を求めるためにできることはあるのでしょうか?そのひとつがサイアノタイププリントではないかと私は勝手に考えています。



注)
DSLR: Digital Single Lens Reflex camera (デジタル一眼レフカメラ)
C-DSC: Compact Digital Still Camera (コンパクトデジタルスチルカメラ)


参考文献
田中雅夫 「写真130年史」 ダヴィッド社 1970
伊藤俊治 「寫眞史」 1992
多木浩二・大島洋編 「世界の写真家101」 新書館 1997



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2013年10月21日月曜日

Print-003 サイアノタイププリントとは?

サイアノタイププリント (Cyano Type Print)とは何だろうか?

1842年、イギリスのジョン・ハーシェル(John Frederick William Herschel, 1792~1871)によって発明されたサイアノタイププリントは、青写真とも呼ばれ、光による塩鉄の化学反応を利用した写真・複製技法です。太陽光に含まれる紫外線を利用しても露光できることから日光写真とも呼ばれる場合があります。

簡単な原理を紹介しますと、鉄イオンが光(紫外線)にあたると、3価から2価へ還元される性質を利用して、鉄(Ⅲ)塩を塗布した感光紙を紫外線を含む光(太陽光など)に照射させると、ネガの濃淡が反転されて光の多く当たったところ(ネガの明るいところ、ポジの暗いところ)の鉄(Ⅲ)イオンが鉄(Ⅱ)イオンへと変わります。ここで、鉄(Ⅱ)イオンのみと反応するヘキサシアノ鉄(Ⅲ)カリウム(赤血塩)で現像すると、光の多く当たったところが鮮やかな青色となる画像が得られます。

デジタルカメラが全盛の今、画像データをプリンタに送れば誰でもきれいな写真が印刷されます。写真の良し悪しは、あのメーカーがいいとか、あの機種がいいとかあらかじめ用意された機械やプログラム(もちろんユーザーの調整によるものもありますが)によるものであり、そこに作家の意志は入り込む余地はプロレベルを除きほとんどありません。

一方で、このサイアノタイププリントは、自分で感光液を調合し、自分で紙を選び、感光紙を作成し、ネガフィルムを使って露光させ、水洗することにより、作家の意思を十分に反映したプリントが可能になります。

また、サイアノタイププリントはアーカイバル性が高く、適切に制作すれば長期間保存可能なプリントとなるため、作品性が高いプリントとなりうるのです。



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2013年10月20日日曜日

Print-002 サイアノタイププリント作例(1)



この写真はサイアノタイプにて制作した写真をマッティングしたものです。大まかな制作手順はこんな感じ。

①ネガ
  →8x10なら密着も可能ですが、軟弱?な燈明はデジタルネガなる手法を選択しています。
②感光液
  →市販の薬剤が2種類あれば水と混ぜるだけ。詳しくはおいおい。
③感光紙
  →例えばOA用紙などの紙に②の感光液を塗り完全に乾燥させる。
④露光
  →①のネガと③のネガを密着させ紫外線で露光させる。
⑤水洗
  →感光液に残った感光液を水洗して除去する。水洗後青色が見えてくる。
⑥乾燥
  →用紙を乾燥させると作品完成。
 
  

なんとなく簡単そうに見えますよね?
これから少しずつ各論へ入っていきます。


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Print-001 サイアノタイプブログ始めました

古典的手法と呼ばれる写真のプリント技法はいくつかの種類がありますが、その多くが劇薬を使う必要があり、誰でも簡単に自宅でというわけにはいきません。ここで取り上げるサイアノタイププリントは、2つの薬品さえ手に入れてしまえば誰にでも簡単にいわゆる「青写真」を作ることができます。

サイアノタイププリントを勉強しようとする場合、概要的なものは日本語でもあるのですが、実際に自分でやろうとすると技術的な内容が必要になってくるのですが、ここはどうしても海外の文献に頼る必要があり、外国語が苦手な方にはちょっとハードルが高いかもしれません。そこで、本ブログでは、サイアノタイププリントを中心に、紫月燈明の勝手に考える写真論とサイアノタイプの技術論、制作過程で試したことや気が付いたことを日本語で徒然に述べています。

特にサイアノプリントって何だろうと思っている方、青写真や日光写真に興味はあるけれど、さてどうやればいいと悩んでいる方、新たなアートの方向を探っている方、写真のオリジナリティについて悩んでいる方などなど、お気軽に見ていただければ幸いです。

サイアノタイププリントを含む写真にはどうしても最低限の化学的知識が必要な場合があります。いくつかの薬品や薬品の代わりになるものを紹介していこうと思いますが、本ブログは誰でも簡単に楽しめることを目的としているため、化学的な根拠には基本的に言及せず、こうするとこうなったという現象論とそのための技術論が中心になっていくと思います。

できるだけわかりやすく書いていくつもりですが、お気づきの点、ならびに疑問点、お悩みの点などございましたらお気軽にご連絡ください。原則答えられる範囲で概ね一日以内に回答するように心がけていますが、海外にいる場合はネットワーク事情も悪く、ブログ自体にアクセスできない国もあるため、回答が遅くなる可能性がありますので、あらかじめご了承いただければ幸いです。


では、本ブログをお楽しみください。

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