①左右反転
露光するとき、感光紙とデジタルネガフィルムは密着させます。正像のままデジタルネガを作成すると、露光時は、ネガの印刷面が最上部、次にフィルム、そして感光紙の順になります。ここで問題となるのがフィルムには厚みがあるということです。デジタルネガの印刷面で遮光されたはずの光がこの厚さの中で拡散してしまうため、像をややぼかしてしまいます。そこで、あらかじめ左右反転してデジタルネガを作成しておくと、最上部にフィルム面、次にネガの印刷面、そして感光紙となります。この場合、ネガの印刷面と感光紙が密着するため、像がぼけることはありません。
②トーンカーブ(ダイナミックレンジ)の調整
デジタルデータは、8ビットの場合0~255の階調をもちます。WindowsPCではbmpやjpgは基本的に画像は8ビットです。デジタルネガにはこの階調を全て持たせることが可能ですが、実際に感光紙に露光させると、このすべての階調を表現できず、明るい方がつぶれていたり、暗い方がつぶれていたり、両方ともつぶれていたりして、コントラストがない画像に見えることがあります。いわゆるダイナミックレンジが狭い画像になります。これは感光紙のベースとなる紙の特性によるものと思われます。同じネガでも紙を変えると画像は大きく変わってきますので、紙の特性を十分に把握した上で、ネガのダイナミックレンジを紙が表現できる範囲に抑えます。具体的には、0から255までの階調がわかるようなテストネガフィルムを作り、紙のダイナミックレンジがどのくらいかを確認します。その結果、例えば、ある露光時間において、20~230(8bit)の範囲しか表現されていなかったとすると、実際のネガに20以下、230以上のデータがあっても紙には表現できないことになりますので、デジタルネガを作成するときにトーンカーブかヒストグラムの調整でこの範囲にデータをつぶしてあげます。そうすれば、デジタルネガ上の階調を全て表現できることになります。一度このテストネガを作っておけば、新しい紙を使う際に事前にネガを作る参考データが取れることになります。
テスト用グラデーションデータの例(数字は明るさ)
これを白黒反転+左右反転して印刷してネガとして使用する
これを白黒反転+左右反転して印刷してネガとして使用する
但し、トーンカーブの調整やヒストグラムの圧縮は階調を減らした結果、ビット飛び(ヒストグラムが歯抜けになる)を起こす可能性がありますので、注意が必要です。
サイアノタイププリントのトーンカーブについては、Peter Mrharさんの本にも詳しく書かれています。
参考文献
Peter Mrhar 「Cyanotype Historical and Alternative Photography」 2013
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