2013年10月22日火曜日

Print-004 写真史(カメラ史?)をさわりだけ

もともと写真は大変手間のかかるものでした。世界で最初に像を定着させたといわれるニエプス(Joseph Nicéphore Niépce、1765~1833)によって撮影された「ル・グラの窓からの眺め」(1826頃)は、露光時間だけで約6時間かけて、自宅の庭の像を金属板に定着させたといわれています。これが世界初の写真だといわれています。

一枚撮影するのに丸一日を費やしたこのころから始まり、写真は画像を得られるだけではなく、少しでもたくさん、少しでも安く、そして少しでも早く像が見たいという写真家の熱い要求が写真を進化させていきました。しかし、まだまだ誰でも写真が撮れるというものではありませんでした。

1888年、イーストマン社が現像を請け負うサービスを開始、1900年にはブローニーフィルムが登場、そして、1925年の35mmフィルムの登場を経て、一般の人々へカメラが普及しはじめ、誰でも写真撮影が可能な環境が整っていきました。

しばらくフィルムの時代が続きますが、そこに革命をもたらしたのが、1995年にカシオ計算機から発売された液晶パネルを搭載したデジタルカメラQV-10であるといわれています。ここからデジタルカメラが急速に普及し、今や店頭に並ぶカメラはほぼ全てデジタルカメラ、携帯電話にもカメラが搭載され、DSLR、C-DSC、PCカメラなどを含めると広義のカメラ普及率(日本)は100%を大いに超えているのではないでしょうか。

デジタルカメラは、使用しているメモリ容量が満杯になるまで画像(写真)が保存できるため事実上枚数(コスト)を気にする必要がない、撮影した直後に画像がチェックできるため失敗が怖くない、失敗写真はその場で消せる、一枚当たりのコストがフイルムに比べて圧倒的に安い、などフィルムカメラの常識をことごとく覆していきました。また、C-DSCのような小型化が進み、女性や子供でも気軽にもてるようになり、デザインも黒一辺倒から明るくカラフルな色のカメラも登場し始め、新たな写真ファンの層を作り出すことにも成功したといえます。また、かつては現像・プリントを請け負ってくれる店が多くありましたが、今や数万円で優秀なプリンタが購入できることから、自宅でプリントまでできるようになりました。

一方で、写真はあくまでも工業製品であるカメラとプリンタがないと成り立たなくなってしまいました。多くの人はここに疑問を持つことなく写真を撮影しているかもしれませんが、構図以外のものに撮影者の意図や個性が入り込む余地が極めて少なくなっています。要はいいカメラやいいプリンタを購入すれば、いつでも誰でも一定レベル以上の写真が作れてしまう便利な世の中になったわけです。

デジタルカメラの開発競争はめまぐるしく、日々新機種、新機能をうたったカメラが登場しています。一製品あたりの寿命は短く、ユーザーも数年たてば新しいカメラやプリンタを購入したほうが利便性が大いにあがると考えます。ここに写真も大量消費社会の一部となってしまったといえるのではないでしょうか。

このような状況の中で、写真に個性を求めるためにできることはあるのでしょうか?そのひとつがサイアノタイププリントではないかと私は勝手に考えています。



注)
DSLR: Digital Single Lens Reflex camera (デジタル一眼レフカメラ)
C-DSC: Compact Digital Still Camera (コンパクトデジタルスチルカメラ)


参考文献
田中雅夫 「写真130年史」 ダヴィッド社 1970
伊藤俊治 「寫眞史」 1992
多木浩二・大島洋編 「世界の写真家101」 新書館 1997



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